突然、町工場の社長に
挑戦と歩み

パート事務から、社長という決断

刈谷市小垣江町にある板金屋の町工場、平山鉄工所。工場やビルに設置する分電盤や配電盤に使う、電気設備ボックスを製作しています。

この町工場を守る4代目は、小柄な女性の深谷麻由実さん。パート事務から社長へと数奇な運命をたどった麻由実さんは、日々挑戦を続けています。

後継者のいなかった平山鉄工所。2代目社長は当時社員だった麻由実さんの夫に「いずれは会社を任せたい」と声を掛けていました。

その矢先、2代目が病に倒れ、急きょ夫が社長に就任。ところが夫もまた、わずか2年で急逝してしまいます。次男の誕生日の2週間前。突然の出来事でした。

夫が遺した会社は、妻である麻由実さんが相続。その行く末を委ねられたのです。

当時、麻由実さんは鉄工所のパート事務員。
時には2トントラックを運転して納品にも出掛けていましたが、「まさか自分が会社を引き継ぐなんて、思ってもみませんでした」

経営に関する知識も経験もなく、加えて時期はコロナ禍。先行きの見えない状況でした。
鉄工所を続けていくつもりはなく、「もう会社を畳もう」と各所へ報告に行きました。

「人もいる、機械もある、仕事もある。続けてみたら?」
取引先で返ってきたのは、意外な言葉。
さらにダメ押しの「子どももいるでしょう?」の一言が心を動かしました。

「その時、子どもは小学生と高校生。生活のためにも働かなければ。続けられるなら、やってみよう」
こうして、麻由実さんは平山鉄工所の社長になりました。

わからないことだらけ、調べて教えてもらう

社長になったとはいえ、現場のことも、機械のことも、溶接の技術もわかりません。だからこそ、「調べて、教えてもらおう」と決めました。

営業や見積もりは自分が担当し、製造は社員に任せる分業制を導入。分からないことは素直に尋ねながら、少しずつ知識を積み重ねていきました。

異業種の経営者とつながる同友会にも参加し、視野を広げました。

「止まっていられない。前に一歩でも進む」

その精神が、麻由実さんの歩みを支えています。

不安な日々を切り替えてくれる占星術

経営判断から晩ご飯の献立まで、毎日が決断の連続。

社長になったばかりの頃は現実の厳しさに押しつぶされそうで、不安が積もって眠れない夜もありました。

その中で出合ったのが、占星術でした。
自分と向き合う時間が気持ちを切り替える助けとなり、今では趣味のひとつに。

新しい友人もできました。

技術を地域へ 自社製品の開発

 「高い技術を持つ職人が減っていくのは、本当にもったいないこと」

後継者不足は多くの町工場の悩み。麻由実さんは将来に向けて地域との接点を大切にしたいと、子ども向けの体験イベントや、自社・オーダーメイド製品の開発にも挑戦しています。

社員とアイディアを出し合い、宅配ボックスやキャンプ用の焚き火台などを製作。注文を受け付けるホームページも作成しました。

「まだ問い合わせは……ゼロ件!」

と、天を仰いで笑いながらも、諦めることはありません。

大きな公共事業にも携わり、板金の仕事を誇りに思っていた夫の言葉が心に浮かびます。

「スカイツリーの明かりは、俺がいたから灯っているんだ」

等身大で、未来を見据える

「社長業に向いているかはわからないけど、昔より今のほうが板金が好き」

そう語る麻由実さん。

やりたいことを自分らしく楽しみながら、迷わず前へと進み続けています。

「子どもたちには、好きなことを大切にしてほしい。自分も楽しんで働く姿を見せたい」

社長としての挑戦の歩みは、これからも止まることなく続いていきます。

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長い年月で育まれた想いは、 毎日をそっと動かす力。 40年続く工場を2021年に受け継ぎ、 オーダーメイドのものづくりや板金修理を 「こんなの作れますか?」の一言からカタチに。 溶接体験教室では デザインと仕上げはあなたの手で。 見れば想いがよみがえり、 眺めればほっとし、 暮らしに安心を添えるものづくりを。
平山鉄工所  @hirayama_848

深谷 麻由実さんと
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「迷うなら、一歩踏み出そう」